痛みに関しての基礎知識

2021.4.23

しし接骨院・ししフィット 田中 智衣

 

目的

どのような痛みがあるのか、またどのようにして痛みを認知するのか基本を知る。

 

内容・結果

 

痛みの認知

感覚的、情動的な体験から痛みとして認知するようになる。

例えば、怪我をしてその瞬間に痛いと感じる。これが感覚的な痛み、急性痛に対して、その感覚的痛みから『嫌だな、辛いな』という情動的な痛みが後から押し寄せる。

情動的痛み刺激の伝導路は内側脊髄視床路から大脳辺縁系に、感覚的痛み刺激は外側脊髄視床路から体性感覚野というようにそれぞれの伝導路も異なる。

大脳辺縁系は情動に関与するが、情動的要素の処理、自律神経系をコントロールするのは前帯状回「limbic motor cortex」といわれる。

前帯状回は、侵害受容や情動に関係する様々な機能制御に関与するだけでなく、注意や予測などの高次的な認知機能に関与する可能性がある。痛みに対して、①痛みに伴う情動の喚起 ②痛みに対する反応の選択 ③痛み刺激の予知と回避 についての学習に関与している。機能的には、「情動」に関与する領域と、「認知」に関与する領域に分けられる。

痛みの認識は前頭葉の前頭前皮質で行われ、ここが痛みを認知する上で最も重要なところになる。ここでは、背内側視床、側頭皮質、腹側被蓋野、嗅覚系、扁桃体から直接入力を受けて、全ての外界環境情報を脳内に再現する。それを基に生物学的な行動戦略を形成する事に関与し、帯状回、海馬体、側頭皮質、外側視床下部、扁桃体などに出力する。その結果、様々な行動的、生理的反応を引き起こす。

 

 

痛みの分類

痛みを以下のように分類分けする。

 

痛みの基礎知識

 

深部痛・内臓痛はどちらも即時痛、遅発痛の区別はなく、“疼く痛み”として訴えられる。

深部痛は、骨膜、靭帯、関節包、腱、筋膜、骨格筋で限局性の疼く痛みが感受される。侵害性機械刺激による深部痛の閾値は骨膜で最も低く、骨格筋で最も高い。(閾値が低い程弱刺激で鋭敏に反応し、高い程鈍くなる。)骨格筋の痛みは血行障害のある骨格筋が持続的に収縮するときに現れやすい。

内臓痛は、痛みの部位が明確ではなく締め付けられる痛みで、特有な不快感を伴う。体性痛に比べ、局在が不明瞭で性質がはっきりしない。それは、内臓における痛覚受容器の分布が粗く、脊髄内での終末分布が広範囲に広がるためである。

触覚は順応が起こるが、痛覚では順応が起こりにくい。単純に発痛刺激を加え続けると、痛みも続く。細胞体では刺激を受容して反応を起こし続け、受容体の生産を増加させる。その結果、受容体の数が増えることで感受性も上がる。また、結合親和性が増大することを合わせて“アップレギュレーション”(upregulation)といい、刺激の継続により肥満細胞等からの神経伝達物質の増加や神経栄養因子の集積により知覚神経が感作されると痛みが増強される。

「感作」とは、熱や機械的刺激を受容するポリモーダル受容器が、繰り返し同じ痛み刺激を加えられることでポリモーダル受容器が活性化されると痛みが増強する現象のことをいう。例えば、運動時痛があるときに痛みを我慢して運動を続けることで痛みが感作によってひどくなることがある。

即時痛はAδ繊維から神経伝達をうけ、遅発痛はC繊維から刺激を受ける。脊髄後角でそれぞれの痛みの違いが伝達される。Aδ繊維からはグルタミン酸が放出され、C線維からはグルタミン酸とP物質が放出され二次ニューロンはそれに反応して興奮する。脊髄二次ニューロンでおこった興奮は脊髄前外側索を上行して、視床を介して大脳皮質体性感覚野と大脳辺縁系に達し、鋭い痛みと鈍い痛みが認知される。

 

炎症による痛み

炎症による急性痛で、組織を侵害するような外傷における急性痛の初期反応には様々な物質が関与する。主な内因性発痛物質として、アセチルコリン(Ach)、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、ATP、アンギオテンシンなどがある。この中でも炎症と最も関係が深いのがブラジキニンで生体内にはこれに類似する他の物質があり、それら(カリジン、メチオニン、リシン、ブラジキニン)を総称してプラズマキニンという。プラズマキニンは全脊椎動物に存在し、発痛作用、血管拡張作用、血管浸透圧亢進作用がある。これらの作用により発赤、局所発熱、腫脹、疼痛の発現がある。

発痛刺激の入力はサブスタンスPを介してマクロファージや滑膜細胞に作用することで、炎症系サイトカインの放出が行われる。これにより細胞からプロスタグランジンE2(PGE2)が産生される。このように軸索反射はサブスタンスPにより増強される。侵害受容繊維自体や交感神経節後繊維からもPGE2が産生される。これにより関節などで炎症がないときには全く反応しなかった求心性繊維が、炎症に伴うPGE2やPGI2産生により過敏化され反応するようになる。(PGE2、PGI2はプロスタグランジン特有の発痛増強作用の他に血管拡張作用を持ち、ブラジキニンの血管透過性亢進作用を増強させる。)

 

その他の痛み

異常な痛みとして、軽く触られるだけでも痛い、風が吹いても痛いというような微少刺激で痛みが発症してしまう現象を異痛・アロディニアという。神経損傷、関節リウマチや複合性局所疼痛症候群Type Iのように、その痛みが長期に持続した場合、通常侵入する痛覚以外の領域まで神経繊維が手を伸ばす発芽という現象を起こす。通常疼痛は患部の安静で改善するが、この状態が継続すると“複合性局所疼痛症候群TypeⅠ”となり難治なため注意を要する。損傷神経のアロディニアの発現理由として、自由神経終末軸索におけるNav1.3の発現量増加に伴う活動電位発生頻度の増加や、Nav1.9の発現低下による静止膜電位の過分極等も報告されている。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは、自発痛・アロディニア・痛覚過敏・浮腫・自律神経異常を含む病態で四肢の遠位部の外傷に多く、骨折や捻挫、肉離れなどで起こる。

 

 

 

  • 考察

痛みとして感じるという時点で体の防御システムが働いていると考えるが、そのシステムが正常に働いているのか、身体のどこで痛みを感じどこで問題が起きているのかを私たちが探していかないといけないところだと考える。そこでまずは、患者自身にどのような痛みとして感じているのか認識してもらう必要がある。そのためにも痛みの発生や鑑別はもちろんのこと、情動としての痛み、心因性の痛みに対しても患者に寄り添うという意味では知ることが重要であると考える。

 

 

  • 課題・疑問点

痛みの評価として他覚的評価をどのようにしていくか、患者と自分の痛みレベルをできるだけ同じ歩合でみていく。

→検査や施術の際の圧の入れ方、強さ

→言語化する

 

 

  • 参考・引用

実践柔道整復学シリーズ 柔道整復学総論 塩川光一郎・宇井肇・松下隆【監修】 川崎一郎・塩川光一郎【共編】

  1. P35-36. 2. P39,44-47. 3. P48-53.  4. P57-58.

 

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