2021.6.4

しし接骨院・ししフィット

田中 智衣

美容鍼灸Ⅰ

 

 

☆目的

顔周りの体表解剖を知り、より効果的な美容鍼灸に対しての治療法を模索する。

 

☆内容・結果

皮膚解剖(※1)

皮膚は表層から、①表皮、②真皮、③皮下組織の層に分かれている。

①表皮

表皮は重層偏平組織で最下層から基底細胞、有棘細胞、顆粒細胞、

角層細胞により構成されており、基底細胞から角層細胞に分化することを角化という。

角質層の細胞が1つ剥がれ落ちると新しい基底細胞が1つ生まれる。

14日程度で角層細胞になるとさらに10日前後で角質層の再表面に押し上げられ、

3〜4日皮膚表面で肌を守った後垢となり剥がれ落ちる。

この一連の皮膚の代謝のことをターンオーバーといい、

28日周期で繰り返し行われている。

 

②真皮

真皮は密性結合組織で水分子を豊富に含む細胞間基質(ヒアルロン酸など)の中に、

膠原線維(コラーゲン)と弾性線維(エラスチン)が

規則的に立体配列する構造になっている。

 膠原線維は張力に富み柱状に存在し、

弾性線維は収縮力に富み膠原線維を繋ぐゴムバンドの役割をしている。

そのため上から押しても元に戻るようになる。

また、体内からの圧力を抑えて体形を保ち、

肌の弾力性を担う働きをしている。

 上部にある乳頭層からはコラーゲン線維が伸びており、

皮膚表面を厚く丈夫にする働きをする。

また、乳頭層は表皮の栄養維持を行い、

基底細胞が適度に増えると基底層と乳頭層は交互に入り組みあって肌の凹凸となる。

表皮にある程度の厚みがあれば栄養線維に張力が生じて皮溝が深くなり、

運動のための余分な皮膚を収納する。

 

③皮下組織

皮下は疎性結合組織より構成され、体内で吸収され余った養分を脂肪として

貯留することで組織容積を拡大する。

その結果、内部諸臓器と界との空間的な距離を確保でき、

衝撃や温度変化から保護する働きがなされている。

 

肌理のメカニズム(※2)

皮下組織の上に真皮の膠原線維と弾性線維からなる網状様組織があり、

そこからさらに膠原線維が垂直にでて乳頭層を形成する。

乳頭層の膠原線維の間にゼリー状の細胞間基質が満たされる。

その上を表皮が覆い被さるように構成する。

ここで皮膚に様々な方向に伸張があると真皮乳頭層から線状陥凹ができ、

それが規則的な凹凸になることで肌理が形成される。

また、この凸を皮丘、凹を皮溝という。

 

しわ・たるみの原因(※3)

 小じわも肌理も真皮の乳頭下までの皮膚の陥凹である。

肌理は皮膚の遊びを出すためのもので、運動により皮膚が伸びても皮溝として肌理に戻る。

この肌理がないところでは伸びた皮膚は皮溝にはならず撚れてしわになり、

余った皮膚はたるみになる。

また、老化により組織に均一性がなくなるとしわ、たるみが生じる。

 大きいしわになると真皮網状層までの皮膚の陥凹になる。

皮膚をひっぱても消えないしわで、長期にわたる負荷で膠原線維の張力が低下し、

弾性線維とのバランスが崩れ組織の柔軟性が低下することで線維構造が不均一となり生じる。

また、筋拘縮や短縮など内的要因で生じる場合が多く、

表情筋や保持靭帯の付着部などに生じやすい。

表情筋の収縮や拘縮によりしわ・たるみになることが多いことがわかってきており、

これにより皮膚が引っ張られ口角や目尻などの位置が変化することで

加齢を感じやすくなる。

 皮下脂肪によるしわやたるみの発生もある。

顔面最表層筋膜により挙上されている頬上部の浅頬脂肪は眼輪筋と

側頭筋筋膜にも付着している。

これは口角を横に広げたり下げたりする筋肉により引き下げられる。

下垂した脂肪は鼻唇溝でくい止められるため、ほうれい線のたるみとなる。

ブルドックの垂れた頬のようなたるみはJowl変形と呼ばれ、

頬下部の広頚筋前脂肪が下垂し口角下制筋や

保持靭帯でくい止められるためたるみが生じる。

目の周囲は皮下直下で皮下脂肪がほとんどないが、

目の下のたるみは眼窩脂肪の脱出が原因で生じる。

 また、表在筋膜や保持靭帯によるものも考えられる。

顔面の皮下脂肪と皮膚を深部組織に

強固に繋ぎ止める働きをしている保持靭帯は移動が少ない。

しかし、加齢に伴い皮膚がゆるみ脂肪が下垂してくると

それが靭帯付着部でしわやたるみっとなる。

表情筋(※4)

 顔の表層にあり目や口など顔のパーツを動かし、

主な表情を作る働きをしているのが表情筋である。

これらの筋が収縮や拘縮することによってしわ、たるみになることが多い。

 表情筋の大多数は頭蓋骨から起こるが、皮膚や靭帯から起こるものもあり、

顔面神経により支配され目・耳・鼻・口の開閉を主に作用している。

 

◆前頭筋

眉を引き上げ額に横しわをつくる筋肉で、

頭頂部を覆う帽状腱膜により後頭筋と連続している。

これを合わせて後頭前頭筋といい後頭骨の上項線から起こる。

 

◆眼輪筋

眼瞼の皮下に眼裂を取り囲むように輪状にあり、

目を閉じる働きをする。

眼裂の内側端を内眼角といい、

その深部に眼輪筋を眼窩の壁につなぐ靭帯がある。

外眼筋の一つである上眼瞼挙筋(動眼神経支配)が目を開く、

瞼を上げる働きをする。

◆鼻筋

鼻の周囲にあり、外鼻孔を広げる働きをする。

 

◆口輪筋

口輪筋は口を取り囲む様に輪状にあり、口を閉じる働きをする。

強く収縮させると口を窄める。

その他に上唇挙筋、大・小頬骨筋、笑筋、口角下制筋、

オトガイ筋、頬筋など10種類以上の筋が

唇を上下に引いて口を開けたり、

口角を動かしたりして口の形を変えることにより摂食や発語、

感情表現などに重要な働きをする。

 

◆頬筋

少し深層にあり、上顎骨と下顎骨の臼歯部と

これらを結ぶ靭帯から起こり、

口角で口輪筋の深部に合流する。

頬筋は食物が上下の歯の間に入るように働き、

息を吹き出すときに重要な働きをする。

 

咀嚼筋も食物を咀嚼する働きをし、顔の表情を作るのに重要な働きをしている。

咀嚼筋は頭蓋骨の側面と底面から起こり、

下顎骨につく咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4つの筋肉の総称である。

三叉神経の第3枝下顎神経の支配を受け顎関節の運動を担っている。

下顎の挙上を咬筋、側頭筋、内側翼突筋が行い、

側頭筋、内側翼突筋はその他に下顎の後方移動、

左右移動をそれぞれ行なっている。外側翼突筋は下顎の前方移動を行う。

 

 

◇考察

 まずは皮膚や筋肉の働き、作用について知ることで

しわ・たるみに対しての原因とアプローチ方法が見えてくる。

皮膚のターンオーバーが正常に行われるように

身体の状態や生活習慣からまずは見直すことが大切で、

その後表情筋などの筋肉の状態と動きに関しみていくのが一つの改善策と考える。

 

 

◇参考・引用

1.美顔鍼−美顔率と解剖機能からのアプローチ− 土門 奏

※1 P14〜16

※2 P12

※3 P15〜19、31〜33

 

2.解剖学第2版 公益社団法人東洋療法学校協会編 河野邦雄 伊藤隆造 坂本裕和 前島徹 樋口桂 著

※4 P297〜299

 

 

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